令和6年4月1日より相続登記が義務化されます

登記事項証明書の住所非公開措置

法改正

令和6年4月1日より、DV被害者等の保護のため、不動産の登記事項証明書によって公開されていた住所について、申し出ることによって公示用の代替住所を公開することができるよう法制化されました。

これまでは、実務運用によって、前住所等を公開するようにされていましたが、正式に制度化されました。

この公示用住所の代替措置を適用できるのは、自然人(個人)に限られます。

次のいずれかに該当する場合、申出の手続きをとることで、登記事項証明書に公示用の住所が表示されることになります。

代替措置の要件

  • 人の生命もしくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合
  • ストーカー行為等の規制等に関する法律に規定するストーカー行為等に係る被害を受けたものであって、更に反復してつきまといや、位置情報を無断取得されるおそれがあること
  • 児童虐待の防止等に関する法律に規定される児童虐待を受けた児童であって更なる児童虐待を受けるおそれがあること
  • 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に規定する被害者であって更なる暴力を受けるおそれがあること
  • 心身に有害な影響を及ぼす言動(身体に対する暴力に準ずるものに限る。以下同じ。)を受けた者であって、更なる心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあること
  •  特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的以外の目的により前記のストーカー行為等と同様の態様による行為に係る被害を受けた者
  • 前記の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた満18歳以上の者(例:高齢者など)
  • 保護者でない者から前記の児童虐待と同様の態様による行為に係る被害を受けた児童
  • 配偶者以外の者から前記の配偶者からの暴力と同様の態様による行為に係る被害を受けた者
  • 名誉又は財産等に対する脅迫を受けた者
  • 正当な理由なくインターネット上で生活状況を含めたプライバシー情報がさらされている深刻な状況にある者

この公示用住所代替措置の対象となる登記は、所有権の登記名義人に限られず、登記名義人であった者、信託目録に記載されている者、閉鎖された登記記録に記載されている者も該当し、さらに、登記記録に記載されている者と同居する者も該当するとされています。

公示用の住所は、登記名義人と連絡をとることができる者の住所、営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地となります。

また、郵便物の受領に必要な次のような記載を付記することもできるとされています。

『〇〇市・・・・1番地1 〇〇司法書士事務所気付』

『〇〇市・・・・・1番1号 〇〇方』

申出方法は、次の書類を添付して申出書を法務局(管轄外法務局へも可能)へ提出して行います。

添付書類

・印鑑証明書(3ヶ月要件なし)
  ※本人が出頭し、運転免許証等により本人であることが確認できる場合は、不要
・現在住所が登記住所と異なる場合は住民票、戸籍の附票(前提としての住所変更登記は必須でない)
・委任状(代理人による申出の場合)
・措置要件に該当する事実を明らかにする書面(無いもしくは十分でない場合対面調査)
  ※この書面がない場合、もしくは十分ではない場合は登記官による対面による調査が必要
  ※具体的には、陳述書及び過去の被害の事実を裏付ける公的書面または客観的書面
  (陳述書例)
  加害者から受けた被害の日時、場所、態様、更に被害を受けるおそれの内容及び理由を詳細に記載
  (公的書面例)
  ・市区町村によるDV等支援措置決定の通知書
  ・ストーカー行為等の規制等に関する法律に基づく警告等の実施書面
  ・配偶者暴力相談支援センター等のDV保護に関する証明書等
  (客観的書面例)
  ・医師の診断書
  ・怪我の写真(撮影時期が分かるもの)
  ・脅迫等を内容とするSNSの投稿時期が分かる画像
・公示用住所及び公示用住所提供者の氏名または名称を証する印鑑証明書、住民票等
  ※法務局を公示用住所とする場合は不要
・公示用住所提供者の承諾書
  ※法務局が提供者となる場合は、法務局指定の申出人の承諾書面
・公示用住所提供者の印鑑証明書
  ※法務局を公示用住所とする場合は不要

法務局は必要に応じ、申出人本人が申出をしているかどうか、措置要件に該当する事実の有無の調査のため、出頭を求め、質問をし、文書の提示その他必要な情報の提供を求めることができるとされています。


公示用住所の代替措置が講じられると、登記事項証明書を取得しても、本人の住所は記載されず、公示用住所が記載されることになります。

本来の住所が記載された登記事項証明書を取得するには、窓口での請求が必要となり、申出人本人が請求していることが分かる運転免許証や、印鑑証明書付委任状による代理権の確認等が必要となります。