相続放棄について
相続放棄について
ある日突然、金融機関や、税務署、または弁護士、司法書士から自分が相続人である旨の通知が郵便で送られてくることがあります。
そうした場合、どのように対応すれば良いか分からず戸惑うことがあります。
そのような時に取りうる選択肢の一つとして相続放棄があります。
相続方法としてどのような方法を取ることができるのかをご紹介した後、相続放棄をすべき場合について、以下でご説明します。
単純承認
相続方法として最も多くとられる方法で、被相続人(亡くなった方)の権利義務を無限に承継することとされています(民法920条)。つまり、被相続人の現金、預貯金、不動産等のプラスの財産と、借金、保証債務等マイナスの財産も全て承継することになります。
単純承認は、相続財産を処分したときや、熟慮期間(自己のために相続が開始されたことを知ったときから3ヶ月)内に、限定承認や相続放棄をしなかったとき等に単純承認したものとみなされます。
限定承認
限定承認は、相続によって得たプラスの財産の範囲内でのみ借金等のマイナス財産を返済することにする相続の承認です。
限定承認は相続人全員でのみすることができ、相続財産目録を作成し、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
また、相続財産管理人において、債権者への債権申出の官報公告を行い、相続財産を換価等して債務の返済を行なっていく必要があります。
また、相続開始時点での譲渡所得税の課税の問題もあり、手続きが煩雑となるので、あまり多くの利用はなされていません。
相続放棄
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされます。
相続放棄をするためには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
また、財産調査等に時間を要する場合、家庭裁判所に対して3ヶ月の熟慮期間の期間伸長の請求をすることができます。
相続放棄を検討すべき場合
被相続人がどのような債務を負担していたか分からない場合や、相続財産の調査が不能な場合などに、相続放棄を検討することになると考えられます。
突然、相続人であるから借金を返済せよとの連絡が来た場合は、比較的容易に検討することができますが、税務署から相続税の申告についてのお尋ねが来たり、見ず知らずの人から遺産分割協議に協力して欲しい旨の連絡があった場合は戸惑うこともあるかと思います。
遺産分割協議に協力し、何らの財産も相続しなかったとしても、それは法律上の相続放棄には該当しません。
むしろ、遺産の処分行為を行なったとして単純承認とみなされてしまい、被相続人が負っていた予期せぬ債務(保証債務等)を負担してしまうことがあるので注意が必要です。
以上のようなケースにおいては、どのような相続方法をとるかについて慎重に判断する必要があり、なんら関わりたくないと思ったときは、相続放棄の手続きをとることが賢明であると考えられます。
相続放棄の手続き
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、自己のために相続開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に申立を行わなければなりません。
提出資料等としては、次のものです
- 被相続人の本籍地記載の住民票除票または戸籍の附票
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- 申請者の戸籍謄本
- 相続開始を知った事情が分かる資料がある場合はその資料
- 収入印紙(800円分)、各家庭裁判所が定める予納郵便切手
家庭裁判所に申立を行うと、照会書と書類が送られてくるので、その質問に回答します。
この照会により、申立の動機や経緯を確認することによって、本当に相続放棄をする意思があるかどうか、3ヶ月以内の申立かどうかの審査がなされます。
無事に申立が受理されると、相続放棄申述受理通知書が送付されてきます。
そして、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の交付申請を行い、それを債権者や他の相続人等に提出することで、相続放棄をしたことを証明することができるようになります。
ここで、一点注意することがあります。
それは、自身が相続放棄を行った後、次順位の相続人が誰になるのかについてです。
相続放棄を行うと、次順位の相続人に相続権が移ります。その次順位の相続人が身近な人であれば、一緒に相続放棄の検討を行うべきということになります。
まとめ
突然、相続人であるとの手紙が送られてきた場合は、戸惑うこともありますが、相続放棄には熟慮期間の制限がありますので、分からないことがれば、まずは専門家等に相談してください。
どのように対応すべきかを専門家と一緒に検討していくことが必要だと思われます。